弊社は、世界各地のディスプレー関連イベントを網羅し、その詳細や動向を各企業様にレポートしています。特に中国の動きはスピードも速く動きもダイナミックであり、この動向を見極めることが今後の産業の方向を占う上で必須です。中国では、10年前は技術的にもまだまだというレベルでしたが、最近は液晶では既に世界レベルを超えており、有機ELも着実に力を付けてきています。展示会でも完成度はさておき、世界初という取り組みをアピールする内容もよく見かけます。SIDの中国版であるICDT(International Conference on Display Technology)も2019年には第3回が昆山で開催され、その中身も年々充実してきています(関連記事:「製造だけじゃない、国際学会でも世界の中心になる中国ディスプレー」https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/02014/ )。 また、その他、各地で開催される展示会でも日本にいては見れない展示内容や発表を、現地に行けば必ず見聞きすることができます。
この中国のディスプレー産業の成長の指標となったのが、毎年10月に北京で開催されてきたDIC(Display Innovation China北京サミット)です(下の図)。10年前にこの会議がスタートした頃は、Tutorial的な内容が多く日本の技術を懸命に吸収しようという姿勢が強かったが、産業の発展と共に年々自信を付け、最近ではディスプレー以外の話題も含めて世界最先端の講師が登壇する場となっています。ここ一二年のDIC会議で議論されている内容は、ハードウエアとしてのディスプレー技術や製造ではなく、5G、IoT、AIなどの時代の進化をベースとした新しいライフスタイルを模索する方向に既に移っています。
このDICは、2019年10月の会議で10周年の節目を迎え、2020年には開催時期と場所を7月の上海に移し、新たな10年に向けたスタートを切ります。内容も今後の新たな発展方向を見据えた形で見直され、2020年代の世界のディスプレー産業を牽引していく新たなプラットフォームになっていくでしょう。弊社もこの開催をサポートしています。
また、ディスプレー製造で主導権を握った中国での最近のホットな話題はフレキシブルOLEDの安定量産化に向けた努力と共に、その先を見据えたマイクロLEDです。中国では毎月の様に各地でマイクロLEDの会議が開催され、それぞれに数百人の参加者が集い熱心に議論を行っています。国内には既にLED産業のサプライチェーンも出来ており、先ずはミニLEDから着実に力を付けながら、将来のマイクロLEDに向かっていこうとしています。マイクロLEDの技術開発では、まだ欧米や台湾が先行していますが、中国の動きにも目が離せません。2020年代には、やっと動き出した日本勢も含めて、世界のマイクロLED開発動向と新たなアプリケーション市場の立ち上がりが大きなカギになるでしょう。
図 2019年10月に開催されたDIC(Display Innovation China北京サミット)の様子
業界の主要企業から数百人が参加する中国最大のディスプレー会議であり、今回10周年の節目を迎えた。会議だけでなく、個別の技術交流会、展示、工場見学などがあり、最先端の産業動向を把握することができる。図中の10年史に記載された様に、中国ディスプレー産業が大きく飛躍した10年間を支えた重要な会議であった。2020年には開催時期と場所を7月の上海に移し、2020年代の世界のディスプレー産業を牽引していく新たなプラットフォームになっていくであろう。(下図のPDF版⇒ DIC2019開催風景)