日経XTECH掲載
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/03436/?P=3
身の周りの空間映像を実現する2020年代のディスプレー
ディスプレーは多様な技術の競争で進化を続けてきた。今後も新たな技術の登場と共に新市場を開拓しながらディスプレーの世界は拡大していく(図2)。これまでは液晶と有機ELの競い合いが主であったが、ここにMicro LEDが参入し、さらには既に市場を形成しつつあるLEDディスプレー、プロジェクション、電子ペーパーなども加わり、2020年代には多彩なアプリ-ケーション市場を作り出していくであろう。
図2 ディスプレー技術の進化のトレンド
表示性能の着実な向上で市場を広げてきた液晶とフレキシブルを軸にユーザービリティーで逆転を狙う有機EL。ここにマイクロLEDが参入し、2020年代の新たなアプリケーション市場である「空間映像の世界」の創出を狙っていく。(図:テック・アンド・ビズ)
これまでディスプレーの競争ポイントは、表示性能の向上を目指したハードウエアの開発競争がベースであった。大画面化、高精細化、高画質化といった目に見える訴求ポイントが大きな開発テーマであり、液晶ディスプレーは様々な部材の力を借りながらハードウエアとしての性能向上を着実に実現してきた。
一方の有機ELは、先行する液晶を追って性能向上を目指しながらも、先を行く液晶にはなかなか追いつけず、薄さやフレキシブル、フォルダブル、ローラブルといったユーザービリティーを追求し、折り畳みスマホを実現するところまでたどり着いた。今後はこのユーザービリティーを付加価値として液晶の逆転も視野に入ってきている。有機ELが2020年代に液晶を逆転しディスプレーの新たな盟主となるには、このユーザービリティーを追求した新たなアプリケーションを作り出し広く市場に普及させることができるかどうかにかかっている。
空間映像を作り出す技術として注目されるのがAR/VR/MRである。ゲーム用途を始めとして、既に実用化が進んでいる。この分野で使用されている技術は、超高精細液晶、マイクロOLEDであり、マイクロLEDが今後の新たな技術として注目されている。高輝度、高速応答のマイクロLEDディスプレーの実用化と新たなアプリケーションの創出がカギを握る。そして、この分野を大きく成長させる原動力となるのが、5G、IoT、AIといった時代の波である。ネットワークでつながった空間ディスプレーの世界が新たなアプリケーションを生み出していくであろう。
最近は、透明ディスプレーをサイネージ用に使ったものも見かけるようになってきた。この透明ディスプレーは液晶や有機ELでも実現でき、さらには大画面の透明スクリーンにプロジェクターで投射するサイネージ用途もいろいろなところで見かけるようになってきた。ここでは、高輝度レーザープロジェクターの普及が後押ししている。加えて、高性能な透明ディスプレーを実現する有力な技術としてもマイクロLEDも期待されている。「透明な空間に突然映像が現れる」というこれまでの直視型ディスプレーには無い新奇性をうまく利用した使い方や新たなアプリケーションを作り出せれば、この分野も大きく拡大していくであろう。
その他、大画面サイネージ用のLEDディスプレーや広告用途などでの電子ペーパーなどもあちこちで見かけるようになり、様々な新規応用分野で市場を作っていきそうだ。
(本記事の前後の内容は、冒頭のXTECHサイトをご覧下さい)